ウッドショックと東京林業~林業・建築家・工務店の視点から見えること~

こんにちは。KOMOREBINOOKのアユです!

今回は、先日開催されたオンライントークイベント「ウッドショックと東京林業~林業・建築家・工務店の視点から見えること~」のレポートをお届けします!

イベント概要

そもそもウッドショックとは、輸入木材の不足によって木材価格が高騰している現象のことを指した言葉です。
KOMOREBINOOKでも木材を確保できないことによる工期の遅延や木材価格の高騰による現場利益の逼迫などが起こっており、対応に追われている状況です。

ウッドショックにどう向き合えばよいのか?私たちにできることは何なのか?

林業から東京チェンソーズの青木亮輔さん、建築業界から「JUNPEI NOUSAKU ARCHITECTS」の能作淳平さんをお招きして、「ウッドショックと東京林業」と題してトークセッションを開催しました!
当日は興味深い話が次々と飛び出しましたが、中でも印象に残ったお話を4つに分けてご紹介します!

今回のゲストのお二人(右上:青木さん 下:能作さん 左上:荒井さん)

①なぜ日本は木材の自給率が4割に留まっているのか?

青木さんが説明してくださった理由は主に2つ。

一つ目は、高度経済成長期に確立された海外の木に頼るという流通ルートが確立していること。戦時中から戦後にかけて、広葉樹を中心に山の木を伐採していく動きがあり、戦後は日本全国はげ山になったそう。その後、スギを約7割、ヒノキを約3割の割合で全国に植樹していきました。
そして高度経済成長期に木材が必要になった時、戦後に植えた木はまだ樹齢20年。使える状態ではなかったため、海外からの輸入木材に頼る傾向が生まれました。

二つ目は、業界の人手不足。
当時燃料として使用されていた木材はガスや電気の台頭でどんどん需要が無くなっていき、それに伴い林業従事者が離れていきました。ウッドショックで海外の木材に頼ることができない今、国産材の需要が高まっていますが、この人手不足によって対応が追いついていないという現状があります。

青木さん「一時は高かった木材自給率が何十年もかけて下がってきていることを考えると、これを1年や2年でどうにかしようとすることがそもそも難しいこと。これからまた何10年もかけて人材育成や設備投資で舵を切りなおすタイミングにきているのかなと思います。」

能作さん「まさに「天地人」で、林業は天も地も人も必要というか。今は「人」が林業にうまくマッチしていない状態だけど、それがだんだんと見直されていますよね。林業の重要さややりがいを共通認識で持てている時代に入り始めていると思うので、「人」がこれから育っていくといいですよね。」

②トレーサビリティの重要性

※トレーサビリティとは
その物品がいつ、どこで、誰によってつくられたのかといった生産~消費~廃棄までの流れを追跡可能な状態にすること。

能作さん「近年、トレーサビリティが議論されるようになってきて。東日本大震災で無残に流される建物を見たこともあり、「なぜ建物が立っているのか?」ということまで考え、学ぶ機会も増えたと思います。」

青木さん「むらやま建設さんもそうですが、木材の使い手がトレーサビリティを意識していただくことで山側も変わってくるのでありがたい流れですね。」

能作さん「枝葉を切って捨てるのではなく個性として使えるようにするとか、小さいサイズで対応できることがわかると山に対する印象が変わります。こんなことまでできるんだ!という。なので、チェンソーズさんの(木を一本丸ごと使う)事例は非常に現代的だと感じますね。」

ここで能作さんが、輸入木材には頼らずに完成させた建物の事例を見せてくださいました。
1つは地域材にこだわったもの、もう1つはなんと震災の影響でもくざいの調達が難しくなったため、リノベーション前の物件から調達した資材を組み替えてリノベーションしたというものです。

能作さん「災害や産業構造による弊害は、モノがどんなところから来ていてどう使われるのかというところが打撃を受けると思っていて。そこをどんなアイディアで乗り越えるか?ということを苦労しながらも面白いなと思いながらやっています。」

青木さん「先ほどの事例でいうと、渋谷のリノベーション程の規模だと山側もストレスなく対応できると思います。」

能作さん「多くの人手を要する設備をどかーんと用意するというよりは、『僕はこの山を守っているんですよ』というくらいのサイズ感でコンスタントに受注したりとか、年に何件か案件を抱えているというようなビジネスモデルが山に入ってくると、山とまちのマッチングがより重要になってきますよね。」

青木さん「顔の見える関係性の中での仕事は満足度が高いですし、無理なく進めることができます。檜原村で全て対応することは難しくても、1部で使用していただけることが増えれば山側もトレーニングされていくので良いですよね。」

今回のウッドショックによって、今まで輸入材に多く頼っていたばかりに、いざ国産材を使用しようとしても山側が使い手のニーズにどこまで対応可能なのかわからないなど、日本の林業の仕組みが理解されていないことが明らかになりました。能作さんのような取り組みを小規模でも重ねていくことで、国産材や地域材のトレーサビリティを確保し、日本の林業と木材の使い手との連携がうまくいくことにつながるのですね。

③小さくて強い林業をつくる

ここで青木さんが、木材の「一本丸ごと」使用事例をいくつかご紹介してくださいました!
「木を一本丸ごと使う」をテーマに活動をしている東京チェンソーズさん。その言葉通り、枝をこんなところに?と驚いてしまうようなインテリアや、樹皮や根っこを使用したインテリアなど木材の使用部位は多岐にわたります。

青木さん「まずは山にどんな材料があるのかを知ってもらうことから始まるのかなと思っています。大量生産、大量消費の流れで機械化をして大型の林業をやろうとすると現場が逼迫してしまう。しかし、こういう特殊な林業をやっていると現場にもゆとりが出てくるようになります。」

能作さん「サービスを受ける側は、『こういうことしかやってくれないんでしょ?』と決めつけてしまっているところがありますが、提供者の顔が見えることで実際に何ができるのかを聞けるといいですよね。後は、単価を上げてでもできることをしっかり提示して、人を魅了していく気概も必要だと思います。ビッグビジネスを動かしていく心地よさとはまた別に、しっかりした単価で小さく回していくことにも心地よさ、面白さがありますよね。」

青木さん「うちでは「顔の見える林業」=「小さくて強い林業」という言い方をしています。地域単位でこの取り組みをすることは、その地域に大きなインパクトを与えることになるんですよ。数千万単位でも売り上げが出せる小さな会社をもっとつくっていけると、田舎にとってはすごくインパクトが大きいですよね。

ニーズがあっても社会性と経済性を両立することってすごく難しくて。社会性を取って山の整備をしていくこともいいんですけど、木を売っていくという商売としての林業で経済性も取っていく。そうすることは林業を長く継承していく上でも大事だと思います。」

能作さん「確かに、小商い化するって新鮮ですね。」

青木さん「そのビジネスが少しずつ育っていくことで地域が良くなっていくというのが、僕らとしてのモチベーションになりますね。」

④質問コーナーにて

林業を仕事にするための必要な経験はありますか?」という質問に関連して、能作さんから青木さんにこんな質問が。

能作さん「林業に兼業をするという余裕はあるのでしょうか?」

青木さんによると、林業は秋から冬にかけての作業が多く、春から夏は別の仕事をする人もいるのだそう。デザインから林業業界に入ってきた人で、自分で切り出した木からデザイン・加工をして売るという例も!

青木さん「林業の在り方が多様化することがめちゃくちゃ大事だと思っています。林業ってこうだよね、というのがこの業界は多いんです。こういった面白い人がどんどん入ってきて、こんな林業あったんだ!というのが増えるとこの業界は変わるんだろうなと思います。」

お次はこちらの質問。
「日本で木材の国内流通を増やすにはどうしたらいいでしょうか?」

青木さん「国レベルでは長いスパンで数値目標を据えて、人材育成をしっかりやっていくことが大事だと思います。そしてこの流れとは別軸で、個性的な会社を増やしていくことでニッチなニーズ(能作さんの取り組みなど)と繋がっていくことも必要です。」

能作さん「デザイン側から考えると、高単価少量生産ということだと思います。自分が担当する1つのフェーズだけではなくて、他のフェーズで何が求められているのか?というところまで関わってデザインできれば良いなと。後は、ソフトとハードの間の断絶をなくして、ストーリーとコンテンツとして流れるようにデザインしていけるといいですよね。」

青木さん「今まで木を使ってくれる人と山側が全然繋がっていなかったので、ホームセンターで木を買えばいいや!という話にもなってしまう。なのでやはりそこは大事ですね。」

能作さん「林業業界、材料を入れて建設する工務店、そして線を引いてお客さんに説明する建築家の循環がスモールサイズで集まってチームになって、山側もデザインコンセプトを理解し、建築側も山の状況を理解しているという関係を結んでいかないと、適正な単価は生まれないと思います。」

お二人からメッセージ

青木さん「これを聞いていただいている方は、これからの林業の可能性を感じてもらえたらと思います。顔が見える関係性を築くきっかけとして、是非山に来ていただきたいです。」

能作さん「都心ではなくベッドタウン(自分のフィールド)に来てもらいたいときに、自分の側に小さくても資源(話のネタや美味しいコーヒーなど)を持ってたりお店を自分でやっていることでより来てもらいやすくなると思います。大きな経済活動がもっている優位性はひっくり返すべきだなと。山にも行きたいですし、ベッドタウンにもぜひ来ていただきたいです!」

最後に

今回お二人の貴重なトークセッションを通じて、ウッドショックは各業界のこれからのあり方を問う大きなきっかけとなったのだと感じました。サプライチェーンの流れをユーザーが理解していなかったこと、そして、1つのサプライチェーンに頼ってしまうことで環境の変化が起こった時に対応しきれないこと。これらが原因で日本はウッドショックによる大きな影響を受けてしまいました。

今回のウッドショックをきっかけに木材を取り巻く経済活動のあり方を見直し、異なる業種の壁を無くして「小さな経済圏」を築いていくことで、環境の変化にも臨機応変に対応できる強い産業構造ができあがるのだということが、お二人のお話を聞いてわかりました。

この「小さな経済圏」の実現のために、私たちもKOMOREBINOOKという一工務店として、そしてまちで人と人とのつながりを生むプロジェクトIttekiとして今できることを考えていきます。

クロストークイベントのアーカイブがIttekiのFacebookにてご覧いただけます!レポートを書くにあたって、泣く泣く省略させていただいた面白いお話もたくさんあるので、気になる方は以下のボタンからご覧ください^^

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